萌蘇(2)

(続き)

とまあ、ネタ的な感想はここまでにして
そろそろこの作品に対する真面目な感想も。
なんだかんだでけっこう真剣に見ていますから。
前作と同じく主人公達(ラクス・キラ)が何をやりたいのかが
さっぱり分かりませんので、
彼らのことについては触れることができません。
(今作こそは何らかの明確な意図を持って
行動していると信じているのですが・・・。)
よって、とりあえずキャラクターが掴めた新田こと、シンについて。

多くの人がそう思っていると思うのですが、
シンは自己中心的な人間、
我々の社会でいうと人間的に未熟な存在を
象徴しているものと思われます。
(テロリストや犯罪者ら憎しみにとらわれる人も
そういう存在に含まれているでしょう。)
面白いのは、この自己中心という概念の捉え方です。
彼の描写に一貫されているのは
自己の不幸の原因を探る際に
自分自身にそれを見出すことを徹底的に避け、
自らの外側にそれを見出そうとする
ところにあります。
要するに自己中心的な人間を
自分が悪くないことを前提に思考しようとするものとして
描いているわけです。

これは単純に家族の死を国のせいにしたり、
ステラの死をキラのせいにしようとしたところ
以外にも現れています。
例えば、ステラの死において
自分がステラの命を託したにもかかわらず、
その約束を守らずステラを死に追いやる原因を作ったネオを
恨むような描写がないのは
まさに彼のこの考え方の現れです。
シンがネオを非難することは、
すなわち、ネオにステラの命を託した自分の判断をも
否定することになるわけですから、
そうではなく、外側つまりキラに
ステラの死の原因を見出そうとするのです。

なぜ彼が突然あそこまでアスランを嫌悪したのかに関しても、
確かにシンにとっては力が全てだから
弱いアスランが気に入らなかった
と単純に考えても説明できないことはないのですが、
彼のこの思考回路に原因があると考えた方が
分かりやすいと思います。

(続く)