nochmals u:berlegen (4)

(続き)

千鳥かなめの死に絶望し、
かつての敵の言葉に精神的ダメージを受けていたとは言え、
あれほど自分によくしてくれていた仲間達の生命にすら無関心になったのは
千鳥かなめを絶対的な出発点としたとした
彼の極端すぎる価値観に原因があると私は思ったのです。
仮に他の価値観(ここでは仲間達を想う心)に少しでも独立性があれば、
たとえ最優先であった価値観(千鳥かなめ)が崩壊したとしても
仲間達を助けようとする意思は残るはずだからです。

要するに相良宗介が恐ろしく
千鳥かなめに依存しているように私には見えたのです。
確かに愛する人を絶対的に最優先にするという価値観は
ある意味当然と言えるものでしょうが、
それ以外の価値観が全てそれに依存していて全く独立性がない
というのはあまりに極端すぎです。

分かりやすく極端に言ってしまえば、
彼にとってのミスリルの仲間達は
千鳥かなめがいてこそ価値があるものでしかなく、
千鳥かなめがいなくなれば
限りなくどうでもいい存在という扱いであるわけです。
仲間達があれだけ彼のことを想っているのに
そりゃあんまりでしょ。

しかし、「いや、そんなことはない。彼はいい奴だ」
と多くの人は思っているでしょうし、
私も実はそう思っているんです。
そもそも、仲間達を見捨てかけたあのシーンがなければ
私もこんなひどい見方をしませんでした。
確かに千鳥かなめと離れただけで任務に集中できないことからも
彼が千鳥かなめに強く依存していることは明白ですが、
最愛の人にある程度依存するのは当然のことですから
それくらいではこんなひどい見方はしないわけです。

つまり、仲間を見捨てかけたあのシーンが
私は余計だったと思うのです。
現在の自分にかなり迷いが生じていたところに
かつての敵から昔の自分の姿を肯定されるという
強力な精神的ダメージを受けた相良宗介を、
そして、千鳥かなめという存在の大きさを強調するため
敢えてあのように描いたんだと思うんですけど、
あれでは彼がこれまで仲間達と築き上げてきた絆は
一体なんだったんだ・・・?
ということになると思うんですよ。
私は前作を見ていませんから
詳しいことは分からないんですけど、
多分前作等でも彼らと協力して
いろいろな障害を乗り越えてきたのでしょう。
そういった過去の経験があったはずなのに
あのような描写をされては過去の否定にもなりかねません。

(続く)