頑迷固陋(2)

(続き)

そんなサイヤ人である悟空がこのままでは
当然地球の社会に適応できません。
いくら我々地球人と同じように
他者を思いやる心(つまり地球における一般的な善)を
教え込まれても、
この精神は戦闘本能と矛盾するために
サイヤ人である悟空の中では
完全に消化できないのです。
(思いやることが出来る対象は
せいぜい身近にいる親しい人くらいで、
全く知らない人までは
とても思いやることはできないわけです。)

結局、他者を思いやる心よりもむしろ
それによって生み出される結果(人を助けることなど)を
善とする価値観によって、
悟空はこの矛盾を何とか解決しているのではないでしょうか。

そして、この考え方は表面上は
我々が考える善と同じに見えるため、
悟空が我々からも善人に映るわけです。
そこに、何度も地球を救うという結果が加わって
我々は悟空を完全な善人と思い込み、
勝手にそういう目で彼を見てしまうわけなのですが、
実際は我々の思い描く善人とは異なる思考回路で
悟空は行動しているのではないのか
と僕は考えているわけです。

さて、既に書きましたが、
僕は別に悟空が悪いと言っているのではありません。
しかし、悟空のこの考え方が気に入らない
という人が結構多いみたいです。
つまり、自分達の中にある正義と異なる悟空の考え方を
正しくないとみなしている人が多いわけです。

しかし、果たして悟空の価値観は
本当に正しくないのでしょうか。
さらにこれを悟空に限定せず一般化します。
ある視点から見て正しくないように思える価値観を
果たして一般的に正しくないと言えるのでしょうか。

論理的にそれが可能なのかを考えてみましょう。
例えば、冒頭の悟空の発言を
感情的にではなく冷静に
次のような感じで非難する人がいるかもしれません。

(続く)